セラミックの歯というのは今はかなり有名になり、ほとんどの人が知っていると思います。
では、セラミックにもいくつか種類があることはご存知ですか?
単純に「セラミック」という名前だけだと、セラミック100%じゃない材料の可能性があります。
ということでセラミックの落とし穴についてご紹介しますので、セラミック治療を検討中の人はしっかり読んでください!
知識ナシで治療するとまんまと騙されてしまうかもしれませんよ!
目次
セラミックとはグループ名である
セラミックには大きく分けて2つの種類があります。
100%セラミックでできているものと、プラスチックや金属が混ざっているものです。
100%セラミックでできているものを「オールセラミック」と呼びます。
プラスチックが混ざっているものは「ハイブリッドセラミック」と呼びます。
金属の上にセラミックを塗っているものを「メタルボンド」と呼びます。
オールセラミックはさらにいくつか材料が分かれています。
この全部を合わせた総称が「セラミック」というわけです。
つまりこういうこと↓
なので、単純に「セラミック」としか書かれていないものだと、オールセラミックなのか混ざりもののセラミックなのかわかりません。
まずはオールセラミックとそれ以外の違いをしっかり覚えましょう!
インレーとクラウン両方ともセラミックがありますが、わかりやすいクラウンで説明します。
インレーでも使えるものはそれぞれ記載しますね。
オールセラミックとは
こんな感じで表も裏も中も外も全部セラミックだけで作られているもの。
金属やプラスチックは一切なしです。
なので金属アレルギーの心配や歯茎の変色、セラミック自体の変色は起こりません。
オールセラミックは大きく分けて下の3つの種類があります。
- セレック
- e.max(イーマックス)
- ジルコニア
セレックとは
セレックは専用の機械に歯の形を登録し、そのデータをもとに機械でセレックと呼ばれる材質のブロックを削って作るセラミックです。
最初から最後まで全部機械で作っていきます。
ブロックはこんな感じ↓↓
©Sirona Dental
昔からよくやってる型取りからでも作れますが、専用の3Dカメラを直接口の中に入れて歯の形をスキャンして作ることもできます。
©Sirona Dental
最大のメリットは1日で終わること。
早いと1本1時間くらいでできちゃいます。
型取りのむにゅっとした材料が気持ち悪いって人も多いので、それを避けられるのはいいかもしれませんね。
その代わり専用の機械が置いてある医院じゃないと1日の治療(ワンデートリートメントと言います)はできないので、医院選びは慎重に。
歯茎の状態が良くなかったり、何らかの処置が必要になったりすると1日じゃ終わらないこともあるのでご注意を。
また、機械で作ることから時間も人件費も削減できるため、比較的安く提供している医院が多いです。
インレーだと4万円くらい。クラウンだと6万円くらい。
デメリットとしては、安価とは言っても保険治療と比べると高くつくこと。
それから使える色が決められているので、自分の歯の色と合う色が無いということが起こることも。
特に天然の前歯は根元から先端に向かってグラデーションになっていて先っぽは透明感がありますが、機械で作るとそれらの再現ができません。
見た目のきれいさを求めるなら手作業の工程が入っているものの方がいいです。
メリット
- 変色や金属アレルギーの心配がない
- 表面に汚れがつきにくい
- オールセラミックの中では比較的安価
- 1日で終了できる
デメリット
- 自費診療なので保険診療に比べると高価
- 色が合わない可能性がある
- 透明感があまりなくそんなにきれいじゃない
- ブリッジ(2本以上連結したもの)は作れない
e.max(イーマックス)とは
e.maxと呼ばれる材料のブロックを、最初はセレックと同じように機械で削って作りますが、途中まで機械で作って後半を手作業にするか、最後まで機械で作るかで物が違ってきます。
手作業で仕上げるものを「レイヤリング法」、最後まで機械で作るものを「ステイン法」と呼びます。
インレーとクラウン両方作ることができます。
レイヤリング法はセラミックの基礎となるフレーム(型枠)を機械で作り、その上にポーセレン(陶材)を手作業で塗って歯の形を作っていきます。
フレームとポーセレンで2層にすることで、天然の歯のような透明感やグラデーションをつけることができ、かなりきれいな仕上がりにできます。
なので特に前歯のクラウンにおすすめ。
ただし、透明感が強く中が透けやすいので、支台歯(土台)の色が濃かったり、金属が使われている場合は、その色が透けて暗く見えます。
また、強度の問題で奥歯にはあまり使われません。
ステイン法は機械で形を作り、最後に光沢と色を塗って仕上げます。
ポーセレンを使わずフレームの材料だけで形を作るので、レイヤリング法よりも強度が出ます。
負荷のかかる奥歯にはこのステイン法が使われます。
2層仕上がりじゃないので透明感があまりなく、レイヤリング法に比べると見た目が劣るので前歯には使用しないのが普通。
レイヤリング法とステイン法で値段を変えてる医院はあまりないと思います。
インレーが6万円、クラウンが8万円くらいかな。
セレックより強度も見た目もいい分少しお高め。
メリット
- 変色や金属アレルギーの心配がない
- 表面に汚れがつきにくい
- レイヤリング法だと天然の歯に近い透明感があり見た目がきれい
- ステイン法だと強度が高いので力がかかりやすい奥歯でも使える
デメリット
- 自費診療なので高価
- レイヤリング法は土台が金属だったり色が濃かったりすると透けて暗く見える
- ステイン法は透明感が少ないため前歯には向かない
- ブリッジ(2本以上連結したもの)は2本までなら作れるとしているところもあるが、基本的には作れない医院の方が多い
ジルコニアとは
作り方はe.maxとほぼ同じで、フレームの材料がジルコニアというセラミックに変わっただけです。
作り方も機械+手作業か、すべて機械の2種類で、機械+手作業は同じレイヤリング法と呼びますが、すべて機械の方は「フルジルコニア」と呼んでいます。
こちらもインレーとクラウン両方可。インレーは機械で作製します。
ジルコニアはe.maxよりも強度が高く、一般的な歯科医院で取り扱いがあるオールセラミックの中では一番硬いものになっています。
レイヤリング法はe.maxと同じくフレームとポーセレンの2層構造。
透明感がつけられたり色の自由が利くところはe.maxと同じで、とてもきれいな仕上がりになります。
また、ジルコニアはe.maxのように土台が透けるという心配がありません。
ある程度の強度もあるので、前歯にも奥歯にも使える万能くん。
芸能人や夜のお仕事の人などでめちゃくちゃ白い歯になってる人がいますが、このジルコニアを入れてることがほとんどです。
色もたくさん種類があるので自分の好みで選べるのが◎
オールセラミックの中で一番きれいで質も良いと言えるでしょう。
フルジルコニアはめちゃくちゃ硬い。とにかく硬い。e.maxステイン法より硬い。
ある程度の光沢や色はつけますが、白めの仕上がりになることがほとんど。
クラウンいろいろ試してきたけどどれも割れちゃったって人が使う最終手段だとわたしは思ってます。
硬すぎてかみ合わさってる反対側の歯にダメージが行く可能性があるので、よっぽど噛む力が強い人以外にはおすすめしないかな。
ジルコニアは万能なだけあってお値段も一番高い。
インレーで7万円くらい、クラウンは10万円くらい。
フルジルコニアだともうちょっと値段上げてる医院もあります。
昔はクラウン15万円くらいが相場でしたが、価格競争でちょっと下がりました。それでも高いけど。
メリット
- 変色や金属アレルギーの心配がない
- 表面に汚れがつきにくい
- レイヤリング法だと天然の歯に近い透明感があり見た目がきれい
- 天然の歯に近い色から、かなり白い色までカラーバリエーションが幅広い
- ブリッジ(2本以上連結したもの)にも使える
- フルジルコニアはかなり強度が高いので割れる可能性が低い
デメリット
- セラミックの中で一番高価
- フルジルコニアは透明感があまりないので前歯には向かない
オールセラミックは見た目、強度、値段が
ジルコニア>e.max>セレック
となっています。
ハイブリッドセラミックとは
ハイブリッドセラミックとは、冒頭にも書いたようにプラスチック(レジン)とセラミックを混ぜて作ったものです。
レジンは安価なので、ハイブリッドもセラミックの中では安くなっています。
インレーで3万円、クラウンで5万円くらい。
ただ、あまり強度が無いので力がかかる箇所だと割れるリスクがあります。
また、CRと同じで食べ物や経年劣化で変色します。
色も透明感はあまりないのでそこまできれいじゃないです。ちょっと黄色っぽい感じ。
メリット
- 金属アレルギーの心配がない
- セラミックの中では最も安価
デメリット
- 飲食物や経年劣化で変色する
- 強度が低いので割れる可能性がある
- 色や見た目がe.maxやジルコニアには劣る
メタルボンドとは
メタルボンドとは、フレームを金属で作り、その上にセラミックを盛り付けたものです。
こちらはインレーはなくクラウンのみ。
50年ほど前から使われているもので、昔はセラミックだけではうまく形が作れないってことで、金属の上に盛り付ける方法が使われたようです。
金属を使っていることである程度の強度があり、前歯から奥歯まで使用することができます。
ただ、金属アレルギーの心配や、金属成分の溶け出しによる歯茎の変色が起こる可能性があります。
また、歯茎が痩せると被せ物と歯茎の間に隙間ができますが、この隙間にフレームの金属が露出して黒く見えることがあります。
全体的な見た目も、金属の上にセラミックを乗せているせいか、青白い感じになりオールセラミックに比べると劣ります。
昔からあるけど値段がずっと変わらない。10万円くらい。
どれでも使えるなら症例ならジルコニアでいいよね。
メリット
- 表面に汚れがつきにくい
- 変色しない
- 使用できない症例が少ない
- 金属の土台との相性がいい
デメリット
- 金属アレルギーの心配がある
- 金属が溶け出して歯茎が黒ずむことがある
- 歯茎が痩せてできた隙間に金属が露出して黒く見える
- オールセラミックに比べると見た目が劣る
注意事項
すべてのセラミックに言えることですが、何かの拍子に割れることはあります。
セラミックは陶器です。お皿とかタイルとかと同じです。
お皿落としたら割れるのと同じで、過度な衝撃を与えれば割れます。
物をぶつけたり、氷とかカニの甲羅とか明らかに硬いでしょってものガリガリ噛んだら即割れると思ってください。
歯ぎしりや食いしばりでも割れます。
食いしばりは自分の体重くらい負荷がかかることもあるみたいですよ。
お皿踏んだら割れるのと同じですね。
また、歯並びの関係で自覚はないけど普通より負荷がかかっているってこともあります。
それから小さな刺激の積み重ねである日突然割れることもあります。
例えば、歯ぎしりや食いしばりで毎日小さな亀裂がセラミックに入っていて、ある日何もしていないのにいきなり割れたということもありえます。
歯科医院勤務時代に「セラミック割れたんだけど!!」とキレてきた患者さんがいて、セラミックはワレモノだって説明するのに苦労しました・・・
もちろん製品の欠陥ということも考えられますが、頭ごなしに割れた=粗悪品という考えではなく、ワレモノだし割れることもあるか~原因なんだろって気持ちを持ってもらえたら、歯科医院スタッフとしてはありがたいです。
まとめ
すべての人にすべてのセラミックが使えるというわけではなく、歯の残り具合、虫歯の進行具合、歯並び、かみ合わせ、噛む力などによって使えるものと使えないものが分かれます。
まずは先生にどのセラミックなら使えるのか聞いてみましょう。
その中で、予算や予後を考えてどれにするか決めるのがいいと思います。
ただ、金属を含んだものにした人は、10年もしたら歯茎の黒ずみや歯茎の痩せによる金属の露出が気になり、やり替えたいとなる人がかなりたくさんいます。
金属の露出はやり替えればどうにかなりますが、黒ずみは治らないことだってあります。
今後のことを考えると、金属を使ったものはおすすめできません。
また、医院によってはオールセラミックと混ざりもののセラミックの区別が明確にされていない場合があります。
「ジルコニア」や「e.max」といった材料名が出ていればいいですが、「セラミッククラウン」としか書かれていないものは要注意です。
蓋を開けたらハイブリッドセラミックだったということもありえます。
オールセラミックと混ざりもののセラミックをごちゃまぜにせず、きちんと分けて選ぶようにしましょう。
ただ、オールセラミックでも手作業を交えて透明感を出せる”レイヤリング法”と、全部機械で作って白っぽくなる”ステイン法”では仕上がりが雲泥の差です。
特に前歯の治療をするときは”レイヤリング法”じゃないときれいじゃないので、オールセラミックだからといって何でもOKとは思わず作り方も注意しましょう。
治療内容や金額の説明をされたら、その中から選んでそこの医院で治療を進めないといけないという気分になると思いますが、自費診療の金額設定は医院によってバラバラです。
全く同じものがあっちの医院だったら半額だったということだってあります。
治療を進めちゃったら、安い医院を見つけてももう転院できないということになる可能性が高いので、まずは治療を進める前に今後の治療内容や自費診療の金額を教えてくれる先生を見つけること、予算が合わない場合は治療を進める前に安い医院を探すことが大切です。
慣れた先生がいいということも大切ですが、いつも行ってるからって理由だけで決めてしまうと後悔するかもしれませんよ。
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